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#010 - 宇治十帖

  voice of KYOTO 独自インタビュー企画

voice -inside- vol.4 くずし割烹 枝魯枝魯 枝國栄一




枝魯枝魯編 | #010 - 宇治の十条 


そんな松本だが、
ゆくゆくはハワイに店を持ちたいと言う。

あまりにも意外過ぎて、
ハワイに立つ松本の姿は想像が難しい。

というより、
今の松本の姿は、花板にあって精悍だ。


一方の枝國であるが、
ここまで京都京都と話をしてきたものの、
実は宇治の出身である。


「枝さんは自分のホームは、宇治。
 京都とは違うと思ってるよ。」


飲んでもまったく酔う気配のない彼女が、
そう口にした。

枝國の中には割烹での下積み時代から、
「京都」という伝統や街に対し、
思うところは多々あったのだろう。


少し距離を置いて、考えてみる。

枝國を京都の板前という前提で取材をしてきたが、
もしかすると、「京都」や「京都の」という言葉を聞く度、
引っかかるものを感じていたのかもしれない。


「京都だから人が立ち寄った?」

「京都だから話題になった?」

「京都だから人が集まった?」

「京都だから成功した?」


自分のアイデンティティを「京都ではない」とするならば、
そんな「京都」への反発があったのかもしれない。


くしくも今年 2008年は源氏物語の千年紀だ。


その源氏物語、
物語の最後は宇治を舞台に繰り広げられる。

まだ Paris 店を立ち上げたばかりの枝魯枝魯ではあるが、
もし、今「次はどこか?」と枝國に尋ねたならば、

ひょっとすると、
「宇治」と答えるのかも知れない。


平等院鳳凰堂を背に、
料理をふるう枝國の姿を想像してみる。


西木屋町を後にした、
また少し、大人になった僕達を優雅にもてなす、
そんな姿が浮かんでは消えていった。



=================================

voice -inside- vol.4  fin.

[ 枝魯枝魯 枝國栄一さんへのインタビュー記事 ]

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#009 - くずし割烹とは?

  voice of KYOTO 独自インタビュー企画

voice -inside- vol.4 くずし割烹 枝魯枝魯 枝國栄一




枝魯枝魯編 | #009 - くずし割烹とは? 


今や、センスのある雰囲気のお店は増えた。
そこで振るまわれる料理は確かに味にもこだわっている。

が、空間演出や環境で造り出せる味にも限界はある。
それに飽きてきた人が実は多い。


その隙間を埋めたのが、
枝魯枝魯ではないかと思う。

カウンター越しに提供されるものは、
決して料理だけではない。

エンタティンメントそのものだ。


それは、くずし割烹というよりも、
今の世に密かに求められていた、
もてなしの形だったのではないだろうか。

それ真剣に向き合った「くずし割烹」というスタイルは、
酒とカウンター越しの会話の肴になり、
アーティストやクリエイターの乾きを潤した。


人間が歩んできたいつの時代にも、
何かが生まれるための「場」が存在する。

「場」には個性が必要だ。

「くずし割烹」というスタイルは、
十二分にその個性に成りえた。

一方でその個性の高まりは、
いやがおうにも創作性を高める。

そして、それと比例するかのように、
排他的にもなったのではないだろうか。


それは長いスパンで俯瞰した時に見て取れる、
京都という街の排他性にも類似している。


「わかる人だけ、わかればいい。」

「アーティストやクリエイター、
常連だけがカウンターを埋める一階。」

初めて来る客は、
その雰囲気にたじろぐに違いない。


「一見お断り。」

言わないまでも、そんな匂いを醸し出す。


それは、どちらかと言えば、
「割烹」に似合う言葉だったはずだ。


だからこそ松本の言葉に、
安堵したのかもしれない。

「僕は2階のお客さんが増えることを望んでます。」

そこには、排他的ではない、
本来の「くずし割烹」の姿がある。


「今の枝魯枝魯は創作料理、
 僕はそれを和食にしたい。」

「くずされた割烹でも、全然いい。」


『枝魯枝魯ひとしな』を背負った
松本の揺るぎない姿は、
Paris の枝國にも見えているだろうか。

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#008 - Salon de EDAKUNI

  voice of KYOTO 独自インタビュー企画

voice -inside- vol.4 くずし割烹 枝魯枝魯 枝國栄一




枝魯枝魯編 | #008 - Salon de EDAKUNI 


「正直、仕事中の記憶ほとんどないわ。」

オランダから駆け付けた友人に、
枝國が漏らした。


オープン2日目。

カウンターの中を所狭しと行き来しながら、
枝國は料理を作り続ける。

何かに意識を集中させるゆとりなど、
どこにも見当たらない。


その枝國の仕事姿を、
密かに演出しているのが仕事着だ。

前から見ると、
見たこともないほど鋭角にカーブした
ポケットが取り付けられている。

腰回りには、
飾りとしてだけでなく、腰回りを絞れるように取り付けられた、
ボタン式のアジャスターが。

後ろに回ると、
背中の中心にスリットが入れられている。

このスリット部分からは金のシルク地がのぞく。
実にエレガントだ。


次々と運ばれてくる料理に目も心も奪われがちだが、
京都の「枝魯枝魯ひとしな」はもちろん、
ここパリ店にも随所に、アートティストやクリエイター、職人のアイテムが
枝魯枝魯の個性を際立たせている。

カウンター正面から店内奥に目をやると、
VIPルームには「カンバラクニエ」の舞妓の画がかかっている。

手元のメニューの表紙は、
枝魯枝魯のWEBサイトにも使われている「だるま商店」のイラストだ。

器は言うまでもないが、箸自体にも工夫があり、
ドリンクや器の下に敷いている手ぬぐいにも職人の技が見て取れる。


そもそもこの店自体も Paris にあっては個性的だ。

ガラスを大胆にあしらった店構えは、
カウンターでの枝國の仕事そのものをディスプレイと見立てており、

Abbesses を道行く人の歩みを、幾度も止めては、
魅了して止まないようであった。


店内にはオープンする少し前から、
「Sleep Walker」が流れている。

どれも、寄せ集めではない。


「気付が付く人だけ、気が付けばいい。」

枝國はそう口にする。
こちらが尋ねないことには、余計な説明は一切しない。

そのポリシーは、
珍しく枝國から京都っぽいものを匂わせた。


そんな枝國の Paris への出発を前に、
枝魯枝魯 night なる壮行イベントが
京都のクラブ WORLD で開催された。

普段一同に会することのないような、
アーティストやクリエイターが枝國のために集まり、
18時から翌朝6時まで、12時間に渡る宴が続いたという。

その宴には、 secret guest として
TEI TOWA の姿もあったそうだ。


いつしか、枝國を中心に
アートティスト・クリエイターのサロンのようなものが
出来上がっていたのではないだろうか。

「 Salon de EDAKUNI 」

それは、京都をはじめとする
伝統的な仕事に取り組む職人さえも巻き込んだサロン。

名前も形も実在はしないが、
そんな世界が枝國の周りには確かに存在するように思える。


それもまた、枝國にしかなしえなかったことの一つなのだが、
それはまた、「くずし割烹」とは相反する世界でもある。

京都っぽい匂いが、再び鼻をかすめた。

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#007 - 本当は僕が行くべき

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枝魯枝魯編 | #007 - 本当は僕が行くべき 


「客層が、どう変わったのか?」

100回を超えるリピーターが少なくない店だ。

まだ枝魯枝魯を知って日の浅い自分には、
すぐに答えにたどり着けるわけもない。

見かねた彼女が付け加えてくれた。

「枝さんのいた時の方が、客の年齢層が広かった。」
「松本さんになった今は、もう少しせばまったんやで。」

それだけ聞くと、
「客が減ったのだろうか?」と安易に想像してしまうが、
そういうわけでもない。


そこには、
枝國と松本、二人のスタンスの違いが映し出される。


枝魯枝魯という店は、
「枝國」をはじめとする板前との会話を楽しむために訪れる客と、
「くずし割烹」というスタイルを一度味わってみたくて訪れる客と、
大きく二分される。

もちろんん、その後常連になる客が多いのは、
「枝魯枝魯」というエンタティンメントに魅せられるからに他ならない。


「枝國」は自分という人間力を最大に発揮し、
「枝魯枝魯」として前者のスタイルを作り上げた。


その枝國が今は Paris だ。

枝國という「調味醤油」を失った「枝魯枝魯ひとしな」は今、
くずし割烹として京都に残された「素材」の味を試されている。


VISAなど、事務的な処理さえ済めば、
「まーくん」こと近松も Paris に合流するという。


「本当は、僕が行くべき。」
「でも、『枝魯枝魯ひとしな』を切り盛りするのが、今の僕の仕事。」


枝國が全幅の信頼を寄せる松本。

「本当は」という言葉と、
「今の」という言葉の裏側にある「矛盾」を抱えて、

松本もまた京都の地にあって孤軍奮闘していた。

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#006 - 僕は料理をつくるのが好きなんです

  voice of KYOTO 独自インタビュー企画

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枝魯枝魯編 | #006 - 僕は料理をつくるのが好きなんです 


「枝魯枝魯ひとしな」での食事がすすむ中、
Paris の枝魯枝魯で感じたことを、
失礼は承知の上で率直に松本に話してみた。

枝國なき京都を、
「くずし割烹 枝魯枝魯ひとしな 」を預かるという意味で、
今、「くずし割烹」について一番考えているのは、
松本をおいて他にいない。


「僕は2階のお客さんが増えることを望んでます。」


毎月のようにカウンターに来てくれるリピーターを、
大切にしないと言ってるわけでは決してない。

しかし、この言葉を聞いて、
多くのことが自分の頭の中で整理できたように思う。


「僕は2階のお客さんが増えることを望んでます。」


頭の中で、断片的に繰り返す。

決して軽はずみな言葉ではない。

この言葉の中に、
明確な松本の想い描く「枝魯枝魯ひとしな」の輪郭をみた。


「客層がな、変わってん。」


そういった彼女の言葉も、
松本の目指す店作りが少しずつ形になってきていることを、
意味しているのだろう。

3月に枝國が日本を発って以来、
「枝魯枝魯ひとしな」を任されておよそ三ヶ月。

Paris で孤軍奮闘する枝國とは違う意味で、
京都の西木屋町で体を張る松本の姿がそこにはあった。

「4月は本当に大変やったんです。」
「これを乗り切れたのは、本当に大きい。」

髪を後ろで結わえた、端正な顔立ちの松本が、
何度も力強く、そう口にした。


「料理は好きだけど、板前は本当は好きじゃない。」

「ただ、こうして自分が花板として立つことで、
 (気持ちを込めて作るだけではなく)
 いかにおいしく提供することが大切か、それを実感した。」


板前という職業は、
料理を作るだけでなく、それを自ら目の前の客に出す。
カウンター越しに、接客もこなすわけである。

料理ができるだけでは、一人前とは言えない。

どんなに気持ちを込めようと、
無作法に、説明もなしに出される食事はそれだけで、
味が格段に落ちる。

板前の立つ、カウンターという舞台は、
作ることともてなすことが一体となった、
エンタティンメントを生み出すための装置なのである。

楽屋で完璧な下準備をしたところで、
舞台で魅せられなければ、客が再び足を運ぶことはないだろう。

それは、2階の客に対しても言えることだ。
対面接客ができないがゆえに、それはより顕著に現れる。


「料理はこころやと思ってたんですけど、結局は腕。」
「それをこの3ヶ月で知った。」

松本の言葉によどみはなかった。

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#005 - 孤軍奮闘

  voice of KYOTO 独自インタビュー企画

voice -inside- vol.4 くずし割烹 枝魯枝魯 枝國栄一




枝魯枝魯編 | #005 - 孤軍奮闘 


Paris での食事を見せると、
松本も、彼女も、口を揃えて言った。

「枝魯枝魯の看板料理ばっかりや。」

ごぼう醤油もしかり、白みそで煮込まれた角煮もしかり。

4月18日のオープンから5月3日までに出された料理は、
枝魯枝魯の最も得意とする料理が並べられたのだという。


「正直、パリで枝國さんが一人でできる精一杯なんやと思う。」

「でも、僕がいても同じ物を出したと思いますよ。」

「Paris ならではの枝魯枝魯の味はこれからですね。」

松本はそう口にした。


この日、松本は枝國に対して、

「孤軍奮闘して下さい。」

と、ケータイからメールしたそうだ。

京都の枝魯枝魯を預かる松本が不意に選んだ言葉は、
「間違いではなかった」ということが、
彼の表情から読み取れた。

それは、僕が Paris で目にした、
カウンターの中で一人で仕事をこなし続ける枝國の姿を、
松本も容易に想像できるかのようだった。



******


あの日、食事を美味しく頂きながらも、
そのあまりの忙しさに、正直ただならぬ思いをしたのも事実だ。

オープン日の18日はもちろん、
翌日の19日についても、何ヶ月もオープンを心待ちにした客で、
Paris の枝魯枝魯のカウンターは埋め尽くされていた。

しかし、
カウンターで料理を振る舞うのは枝國一人、
スタッフも二年前まで京都で働いていた Youlin が一人、
後は、経験のないバイトの女の子が二人という状況だ。

オペレーションもままならぬ、、、というのが、
Paris 店の立ち上げ時の偽りのない枝魯枝魯の姿。

料理はまだしも、
器やグラスのレイアウトや配置をはじめ、
スタッフの制服や仕入れの段取りなど、
まだまだ解決すべき課題はいくつもあるように見受けられた。

とはいえ、オープンすれば、
連日30人近くの客が枝魯枝魯に訪れる。

オペレーションは食い違う、
ドリンクが揃っていない、
枝國の中にはやり場のないイライラが募るだろう。


昨夜、取材に訪れた時に感じた、
やりきったという清々しい笑顔だなと感じたのは、
誤りであったかもしれない。

「体力との勝負でもありますよね。」

20時間前には違和感のあった言葉が、
今にして納得できる。


しかし、冷静に初めて訪れた客として、
この時の枝魯枝魯を評価するとすれば、
正直、あまり点数は高くない。

これが、割烹ならなおさらであろう。

枝國だから、枝魯枝魯だから、くずし割烹だから、
許されることがあるのだろうか?

もちろん、訪れた客がそれぞれに判断することではあるが、
自分もまた、一人の客として訪れたことを忘れてはいなかった。

「くずし割烹」とは、本来何を目指すものであったのか。

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#004 - 手に入らないものは、ほとんどない。

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枝魯枝魯編 | #004 - 手に入らないものは、ほとんどない。 


Paris での取材の翌日、
4月19日に食事を頂くことにした。

はじめて、枝國が一から仕込んだ料理を口にする。


その日のコースは、全9品。
揚げた小イモの旨味がクセになりそうな【先附】に始まり、
ほうじ茶のアイスクリームの添えられた【デザート】でしめられた。

うすいえんどうの豆腐などを盛り付けられた【前菜】は、
その器があってこそ。
主張しない濃紫の塗りの器は、
落ち着いた色目の前菜を主役へと引き立てる。

一転して、落ち着いた目に飛び込むのが朱塗りの椀。
色鮮やかな椀のフタをあけると、
枝豆だろうか?瓢箪の形をした柄が大胆に描かれている。

ここでは器が主役のように感じるが、
目には見えないしんじょうのすり身についてに、
あえて思いを巡らせるのも【椀物】の楽しみ方としては悪くない。

続いて出て来たのは【お造り】。


「お造りなら3種まで。」

京都で取材した際に口にしていた通り、
お造りは赤み、トロ、鯛の三種盛りだ。

トロはわさびで、マグロの赤みと鯛は
ごぼう醤油で頂く。

普通なら鯛から頂きそうなところだが、
わさびを添えてトロをまず最初に。

続いて鯛をごぼう醤油で。

なるほど、知らずのうちに、
食べる順までくずされている自分に気付く。

ただの醤油であったなら、
当たり前に食べたことだろう。

鮮度を感じる、
それぞれの切り身の艶もさることながら、
螺鈿のあしらわれた器の美しさにも目を奪われる。

味覚だけでなく、視覚にも鮮度を忘れない、
そんな心意気を感じる。

切り身の下には、大根ではなく、
小松菜だろうか?丁寧に刻んである。

家庭ではこんなところにまで手を施さないだろう。


【お凌ぎ】にはフォアグラのお寿司。
何に使われるのか?と楽しみにしていた、
太極図を思わせるような器には、
昨夜の仕込みで目にしていた
ミントで香りづけされた大根が添えてある。

ここまででも十分に視覚、嗅覚、味覚ともに楽しめるだが、
五感へのアプローチは、とどまることをしらない。

じっくり煮込んだ【煮物】が盛られるのは、芥子色の器。
筆で描かれたようなネギのソースがアクセントになって、
味だけでなく目にも彩りを与える。

添えられた、中華風蒸しパンを手に取って、角煮を包んで頂く。
手に伝わる温もりが、食べる前から角煮の旨味を引き立てる。

味の濃度が極限に達したところで、
【お口直し】に出てきたのはすだちのゼリー。

淡い桜色に渦まいたカップと、
すだちの酸味を閉じ込めた無色のゼリー。

ほのかな酸味が、味覚を整えてくれる。


しめの【食事】としてのおじやは、
小ぶりのレンゲで、食べたい分だけ少しずつ頂く。

あられの食感が単調になりがちなおじやに、
リズムを与えてくれるようだ。



一通り食事を頂いてみて、
あらためて京都と変わらない「枝魯枝魯」のもてなしに驚く。

Paris 用にアレンジされた感を一切与えない、
日本と変わらぬ味・食感が最後まで続いた。

枝國が、ブログや昨日の取材の中で、
ここ Paris では手に入らないものはないと言っていたが、
まったくその通りだった。

しかし、一方で複雑な気持ちが込み上げのを覚えた。
京都と変わらないものを、Paris で口にすることの意味とは何か。

昨夜の取材で枝國は、
ギリギリまでメニューを決めるのを粘ったと言っていた。

そこにはどのような思考錯誤があったというのだろうか。


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#003 - 「僕がいても、この料理を出した。」

  voice of KYOTO 独自インタビュー企画

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枝魯枝魯編 | #003 - 「僕がいても、この料理を出した。」  


帰国した週の金曜日、
4月25日、今度は「枝魯枝魯ひとしな」にお邪魔した。

結局、Paris に行って感じたことは、
京都で確かめる以外に他はなかった。


店長の松本が花板を勤めるのが金曜日までということで、
背中を押してくれたイラストレーターの彼女とお邪魔させて頂いた。

金曜日の20時台ということもあってか、
店は華やいだ雰囲気に包まれている。

カウンターのほとんどは20代の女性で占められており、
男性客はその時点で一人もいなかった。


カウンター席に座りながら、
Paris での光景を思い出していた。

そう言えば、日本人とフランス人の2人連れの女性客が、
「カッコイイ板前が沢山いるのを楽しみに来たの」と、
口にしていた。

枝國は「生憎。」と愛嬌を振りまいたが、
(もちろん Youlin が呼び出されはしたが)
ここ「枝魯枝魯ひとしな」には確かに男前が多い。

なるほど、金曜日の夜にも関わらず、
女性客が多いわけである。

しかし、と、今になって思う。
枝國のいた頃の「枝魯枝魯ひとしな」はこうであっただろうか。


少し遅れて彼女が入って来る。
自分よりもはるかに、枝魯枝魯をよく知る人だ。

席に座って間もなく、彼女が口にした言葉がある。

「客層がな、変わってん。」

ただ女性が多いとしかその時は感じなかったが、
今にして思えば、そういうことなのかなとも思う。

彼女曰く、
枝國が Paris へと発って以来、
はっきりと「枝魯枝魯ひとしな」は変わったのだという。

やがて料理が運ばれてくる。


先附の器には見覚えがあった。
Paris でも同じ器が使われていた。

こっちが緑で、あっちは紫。

松本は紫の器を「素敵な色」と讃えていたが、
「枝魯枝魯ひとしな」の木目のカウンターには
緑の器が映えていた。

せっかくだからと、その松本に、
Paris で頂いたオープン時のメニューを見てもらった。


「この写真みせてもらって、
 向こうの状況がよくわかりましたわ。」

「でも、
 僕がいてもこの料理を出したと思う。」


その言葉は、
細部まで思い出そうにも思い出せない Paris での料理以上に、
僕の心に「もや」を掛けた。


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#002 - 放心とも取れる笑顔

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枝魯枝魯編 | #002 - 放心とも取れる笑顔  



「燃え尽きてます。」

うっすらと笑みを浮かべているように見えた。


枝國のその笑顔には濁ったものなどなにもなく、
意識を極限まで排除し、
仕事に没頭した板前としての喜びに満ちているように感じた。

その時は、確かにそう感じたのだが、
翌日の仕事風景をみると、解釈はまた違ったものになる。

「入ったら京都でしょ?」の言葉の通り、
そこは「枝魯枝魯ひとしな」と何ら変わらない空気を携えていた。

「ここは Paris で、
 18区の Abbesses の街にいるんだよな?」

そう自問自答するほど、
異国の地にあって緊張を保っていた心は、
落ち着いたし、安らいだ。

残っている客も、
食事はとうに終わってにも関わらず、
会話を楽しんでいるようだ。

確認はしていないが、
みんながみんな、知り合いではないだろう。

しかし、
カウンター越しに始まった枝國との会話は、
すでにカウンターの客同士の会話へと広がりをみせていた。

これもまた、京都の枝魯枝魯を思わせる風景だった。
オープン初日にして、横の広がりが生まれている。

ここ Paris でも枝魯枝魯の在り方は変わらない。


インタビューまでの間、
しばらく、お酒を頂きながら待つことになった。


翌日の仕込みをしながら、
枝國は客をもてなす。

「僕の人生間違いだらけなんで。」

と言ったかと思えば、

「もう香りがついたんでね、
 飽きた彼女のように捨てるんですよ。」

と冗談まじりに、
香りづけに使ったミントの葉を投げ捨てた。


黒を基調とした店内は、
「 枝魯枝魯 ひとしな 」とはまた違った表情を見せる。

カウンターは、
店内にコの字型に大きく広がる。

黒の台座の上の透明の天板をあしらったカウンターには、
器やグラスはもとより、時には店内の景色そのものが映り込み、
空間に不思議な奥行きを与えている。

「この黒のカウンター、
 また料理がぐっと引き立ちますね。」

そんな問いかけに、
枝國は力強く頷いた。

「いやー、映えますね。」
「ぐっと、創作意欲がわきますよ。」


やがて、最後の客が店を後にする。

枝國栄一の、枝魯枝魯 Paris店 での長い一日が、
オープンまでの長い道のりが、ようやく一つの終わりをむかえた。


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#001 - まるで京都

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枝魯枝魯編 | #001 - まるで京都  


宿泊先の宿を出ると、
雨が降っていることに気付く。

タクシーを捕まえ、枝魯枝魯のある Paris 18区を目指す。

23時頃に Abbesses の街に着くと、
雨足は既に弱まっていた。

路面に軒を連ねるバーや街灯の明かりが、
水に濡れた路面に反射して夜の街を一層彩る。

午前中に訪れた時とは、まるで違う雰囲気だ。

歌舞伎町とは違って、
ネオンがいやらしくギラつくこともない。

金曜日の夜ということもあってか街には人が溢れ、
ジョッキやグラスがテーブルを叩く音や、人々の談笑の声に、
一人分の足音などはすぐにかき消されていく。

消え行く足音を後ろに聞きながら、
いい街だなと思った。

Paris をろくに知るわけではないが、
空気感というのは共通言語であって、
いくつもの街を旅していれば、それぐらいは肌でわかるようになる。

この広い Paris にあって、
枝魯枝魯がこの場所を選んだことに素直に納得できた。


そんなことを思っているうちに、
また少し雨足が強くなっただろうか、
駆け足で枝魯枝魯のある Rue Garreau へと足を向ける。

駅前の広場を抜け、Rue Durantin へ。

気がつけば人影はまばらになった。
ふと「枝魯枝魯ひとしな」のことを思い出す。

当然なのだが、
あの界隈も人通りが少ない。

突き当たりの Rue Garreau を右手に折り返せば、
昼間、下見で確かめておいた
「GuiloGuilo Cuisine Japonaise」がある。

なんだろう、胸が高鳴る。

面接を受けるわけでも、
自分がもてなすわけでもないのだけれど。

偶然を装って、恋人を尋ねるかのようでもある。


本当に来てしまったなと、
ひと呼吸おいた。


外から店内を見渡すと、
まだ2、3組の客が残っているようだ。


様子を伺いながら、扉に手をかける。

「入ったら京都でしょ?」

カウンターから出迎えてくれた枝國の第一声は、
そんな一言だった。

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